ノーガードなお袋
草刈りは続く。
2年放置していた美術館裏の土手。
見事に草から木に変化を遂げていた。
素晴らしい順応性。
刈り払い機でやるのもギリギリの太さに仕上がっていた。
さあ作業開始という時、一匹のスズメバチが僕の頭の上をかすめた。あとを目で追うと煙突の中へと入り込んでいった。
2年前の豪雪で屋根から落ちた雪の塊の衝撃で煙突はへし折られてしまった。折れたトタンのパイプの穴は塞いでいたのだが、年月とともに劣化し、そこにスズメバチが入り込んだ様だ。煙突をチェックしてると横にメロンくらいの大きさのスズメバチの巣があるのに気付く…
数匹出入りしていたが、あまり活動的ではないので後回し。
仕方なく、駆除の準備。
するとお袋が、殺虫剤と鉈を両手に持ちエプロン姿で登場した。「私は経験があるから任せとき」と…
軍手も頭からビニールも被ってない完全ノーガード状態に僕は、「あっち行って」と言うほかなかった。
僕はしっかり武装して、駆除にあたったが、お袋は僕が脚立の上で作業しているのを、もちろんノーガードで眺めていた。なかなか巣が外れなくて、ビニールを被ったままだと視界が悪いので、どうしようか迷っていると、お袋が「ビニールとらんと見えんやろ」とまた煽ってきた。
ちっ。
僕は一旦、脚立を降り、ビニールを脱ぎ捨て、作業へ戻る。たまに、外に出ていたスズメバチが戻ってきて、僕の頭をこつくのに少々ビビったが、平然と下でノーガード状態で立っているお袋のプレッシャーも感じたので、何事もない様な素振りで無事駆除した。
次見つけたら、知らん振りしてお袋に駆除してもらおうかな笑。
お袋はずっとくぬぎの森にいる。この森に寄生しているのは実はお袋なのかも知れない。
スズメバチの巣のフォルムに暫し見惚れていた。中を覗くとまだ幼虫が動いているのが見えた。可哀想に…
でも僕が巣を取る前からこちらにはスズメバチの出入りはなく、煙突側に集中していた。恐らく黒い蜂の仕業ではないかなと勝手に推測…専門家でもないから分からないが、乗っ取っるんじゃないかな。。
さて作業へ戻り、階段付近の草刈りへ。
レンギョウ、カエデ、ヤマボウシ…色々な木が成長し蔓延っている。ここは全て刈ってしまい、土手をスッキリさせよう。石積みは少し痛み崩れている箇所もあるが補強すれば今よりもっと良くなる。
実はこの石積みは20年前の父の仕事。当時の父は52歳。良くやったな。
くぬぎの森での労働は、僕と父の共通点。
僕はまだまだやれる。
石を積む事は僕の寄生計画の核になっている。