くぬぎの森寄生計画 作業日誌

坂本善三美術館シリーズアートの風vol.7 「吉村形展 くぬぎの森寄生計画」公式ブログ

寄生計画日誌8.12-13 AXISの仲間

天気 晴れときどき曇り

気温 25℃

 

何だか急に過ごし易い天気になって、夜は冷んやり。15年前の気候の様だった。

 

午前中、土手の草刈りの続き。草やら木やらのゴチャゴャ感がなくなりスッキリした。牧場もたまたまトラクターが入りガンガン草を刈っていた。その様子をいつも見て思うことがある。

"テクノロジーには勝てない…"

僕は僕のペースでやるだけだ。

 

 

さて今日は福岡からアクシス福岡の仲間が遊びに来てくれた。皆世代の違うメンツ。

皆作業を手伝ってくれるという事で、僕がやっている岩を削り出す作業にあたってもらった。

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最初は草に隠れて見えない状態から、削り出していく。

一番若い凛くんがフィジカルで苔を剥ぎ取ると、大地から岩が顔した。それを見ると、皆のテンションが一気に上昇。

どんどん土を掘り始めた。

岩の全貌がどうなってるのか?

この岩はいつからここに存在するのか?

岩の力に皆が取り憑かれていった。

きつい労働でもワクワク感が勝る。

いくらでも続く作業だけに、終えるタイミングもある訳だ。今回はそろそろ夕暮れ時。お腹が減ったので終了。

 

日が暮れるとともに作業を終える。

自然な流れだ。

 

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皆さん古代のお墓を連想していた。

 

 

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夜はくぬぎの森でBBQ。

作業後のビールは美味い。

そして肉。

皆良く食べる。

 

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食べて沢山笑い散らかした後、今回僕が是非やってもらいたかった、ギャラリーの中で柔術。一体どんな感じになるのか、ちょっと試して見たかったので、柔術着持参してもらった笑。

 

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マットの色、空間作りの問題は多々あるが、意外と成立してるなと思った。

 

みんなマットの上でゴロゴロすれば気分も良くなるのか、気づけば午前一時。

皆んな好きだわ。

子供の様に熱中してた。… 

 

そして翌日

くぬぎの森モニュメント

"終わりのはじまり2011-" まで道着で歩く。森を歩く様子がシュール過ぎたが、青道着が緑の森に映えまくっていた。

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この絵、やってと言わないのにやっぱりやるという。40代vs20代

 

 

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岩での瞑想。

空間がすごく引き立つ絵だ。

決してパフォーマンスではなく、本当にこの森の空気を静かに吸うと気分は良くなる。モデルは少し半笑いだけど。

 

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石の舞台に射し込む木漏れ日が渋谷さんをより一層、スピリチャルな世界へと誘う…

 

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ならさきさんもヨガりました。

 

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ここに立つ事に意味がある。

この場に皆と立てるなんて、作ってる時は想像もしていなかった。

この岩が皆を呼んだ。 

 

 

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そしてシンプルな朝食

 

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今回、くぬぎの森寄生計画でやりたかった事が二つ叶った。

一つ目、僕以外の人がリアルに岩を削り出し大地に向かってくれたこと。

二つ目は、父の油絵を背景に柔術をしてくれた事。

くぬぎの森の自然の中で労働する事で、この森のスケールを体感して欲しかった。自然のびくともしない強さにぶつかってくれる事が、ほんの一瞬でも嬉しかった。

"絵は鑑賞するもの"ではある。ギャラリー内をゆっくり眺め、それぞれがそれぞれの思いにふける。それはそれで良いと思う。でも、この倉庫の様な場所に長年居ると、父の絵は風景になっている。ただそこに存在する壁の様な背景になる事のほうが自然じゃないかと思う様になった。

 

柔術の後ろにアートがある。

人を包み込む様な感覚でアートを存在させる。

くぬぎの森寄生計画の空間は徐々に拡がりを見せている。

 

 

今回、くぬぎの森までお越しくださったアクシス柔術アカデミーの渋谷さん、凛くん、楢崎さん、みづるさん、作業に参加頂きありがとうございました。またくぬぎの森の新しい風景が生まれました。

これに懲りずにまた遊びに来て下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノーガードなお袋

草刈りは続く。

2年放置していた美術館裏の土手。

見事に草から木に変化を遂げていた。

素晴らしい順応性。

刈り払い機でやるのもギリギリの太さに仕上がっていた。

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さあ作業開始という時、一匹のスズメバチが僕の頭の上をかすめた。あとを目で追うと煙突の中へと入り込んでいった。

2年前の豪雪で屋根から落ちた雪の塊の衝撃で煙突はへし折られてしまった。折れたトタンのパイプの穴は塞いでいたのだが、年月とともに劣化し、そこにスズメバチが入り込んだ様だ。煙突をチェックしてると横にメロンくらいの大きさのスズメバチの巣があるのに気付く…

数匹出入りしていたが、あまり活動的ではないので後回し。

 

仕方なく、駆除の準備。

するとお袋が、殺虫剤と鉈を両手に持ちエプロン姿で登場した。「私は経験があるから任せとき」と…

軍手も頭からビニールも被ってない完全ノーガード状態に僕は、「あっち行って」と言うほかなかった。

僕はしっかり武装して、駆除にあたったが、お袋は僕が脚立の上で作業しているのを、もちろんノーガードで眺めていた。なかなか巣が外れなくて、ビニールを被ったままだと視界が悪いので、どうしようか迷っていると、お袋が「ビニールとらんと見えんやろ」とまた煽ってきた。

ちっ。

僕は一旦、脚立を降り、ビニールを脱ぎ捨て、作業へ戻る。たまに、外に出ていたスズメバチが戻ってきて、僕の頭をこつくのに少々ビビったが、平然と下でノーガード状態で立っているお袋のプレッシャーも感じたので、何事もない様な素振りで無事駆除した。

 

次見つけたら、知らん振りしてお袋に駆除してもらおうかな笑。

お袋はずっとくぬぎの森にいる。この森に寄生しているのは実はお袋なのかも知れない。

 

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スズメバチの巣のフォルムに暫し見惚れていた。中を覗くとまだ幼虫が動いているのが見えた。可哀想に…

 

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でも僕が巣を取る前からこちらにはスズメバチの出入りはなく、煙突側に集中していた。恐らく黒い蜂の仕業ではないかなと勝手に推測…専門家でもないから分からないが、乗っ取っるんじゃないかな。。

 

さて作業へ戻り、階段付近の草刈りへ。

レンギョウ、カエデ、ヤマボウシ…色々な木が成長し蔓延っている。ここは全て刈ってしまい、土手をスッキリさせよう。石積みは少し痛み崩れている箇所もあるが補強すれば今よりもっと良くなる。

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実はこの石積みは20年前の父の仕事。当時の父は52歳。良くやったな。

くぬぎの森での労働は、僕と父の共通点。

僕はまだまだやれる。

石を積む事は僕の寄生計画の核になっている。

 

 

 

 

 

 

 

CAGE 寄生計画

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坂本善三美術館での中学生とのワークショップ2日目。

台風の影響か風も少し吹いていた。

ちょっぴり蒸し暑さを感じながらの作業。

メンバー

男子5人女子2人

+パティスリールイのツインズ

ライ&スイ

 

 

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作業は黙々と行われ、形はゆっくり変化していく。作品がしっかり地に足をつけようとする時間だ。

 

皆へ伝えた言葉は…

"枝を絡ませる"

 

昨日は大地に突き刺し土台をしっかり作る事に徹してもらった。形はどんどん変化し、作業としてはやりがいがあるもの。今回は地味な作業が続く。枝に枝を絡ませていく。

 

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何を作っていくか分からない作業だが、何にしようかというところまでは来た。

それは突然…

 

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『CACE』

 

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枝を突き刺し柵にする。その柵が絡み合い増殖していくと、巣の様な形になっていった。これをCAGE(檻)まで仕上げていこう。

 

もう一度デッサンを練り直そう。

皆と共有出来るいい絵が描けそうだ。

 

10月の展覧会に向けて、坂本善三美術館でも寄生計画が着々と実行されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

寄生計画日誌8/4

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今日はくぬぎの森から場所を移し、坂本善三美術館へ。楽しみにしていた小国中学校の生徒とワークショップ。

 

先週、僕が不在で行われたワークショップは大成功との知らせが山下さんから届いていた。楽しみに現場に行くと、想像を超えた空間がそこに在った。

"草をむしる"

だだそれだけの労働に中学生達は頑張って取り組んでくれていた。

草を根こそぎむしり取るというのは、なかなか根気のいる作業。一人では、すぐめげてしまうところ、仲間との共同作業で、出来上がった様だ。

山下さんから送られてきた動画を見た時、感動すら覚えた。たかが草むしり…のはずが、音楽へと変わり、即興のパフォーマンスに最後は仕上がっていた。

前回のワークショップについては後ほどリポートしたい。

 

今回集まってくれた中学生は、6名。

金髪で森で労働。何やってるおっさんか意味不明…しかも寄生計画?とか訳がわからない。僕の風貌に最初は戸惑っている子らもいたと思うが、"金髪だけど怖いから"と逆に放り込んでみると、一気に距離を詰める事が出来た?と思う。

何事もファーストコンタクトが大事。付け加えてギャップも大事。

 

彼らには、くぬぎの森から持って来た桜の枝を使って面白い形を作ってもらった。皆で共有出来る、スケッチを描いたので、僕の頭の中を最初から見せようと思ったがやめた。多分、スケッチが邪魔して進まないか?説明書みたいな感じで受け止めるんじゃないか?と思ったから。なぞっていく行為は、自然では無意味。説明書は家に置いて来ることにした。

どうやるのか?どの選択が一番ベストかを考える事を僕は皆にして欲しい。

 

結果スケッチなしで正解だった。

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枝の先を尖らせ、地面に突き刺す。

それから枝をそれぞれ自由に繋げていく。ルールはないが、しっかり固定しグラグラしないように皆には伝えた。

ちょうど男女3人ずつだったので男女ペアを組んでもらい作業。

これがグッド。

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昔フォークダンスで女の子と手を繋ぐ時のドキドキを思い出した。ペアでジョイント部分をシュロ縄で固定していく。段々息があってきて、上手くなるんだな。皆しっかり労働してくれた。

ありがとう。

 

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実はこの桜の枝達は一年前の台風時に倒れたものだ。20本の桜が駄目になり、その作業に半年は取られた。枝を整理するのに困っていた時に、ふと枝を大地に突き刺してみた。すると簡単に立つのだ。面白いので何本も立てると柵になって、枝の整理が報われた。その柵にはツルが巻きつき、小鳥が巣を作った。

寄生計画が実行されていったのだ。

 

今回はそんな作業の断片を中学生と共有したいと思う。明日も同じ作業が続くが、やる事は同じ労働だ。

 

 

寄生計画日誌8/3

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朝をうまく使う奴は出来る人間だ。みたいな事を誰か言ってたな。

どんな理由でも良いが、朝早く動くと気持ちし得した気分だ。

6時スタートで9時まで働いても、昼まで3時間もある!

むちゃくちゃ得じゃないか笑

 

僕は今時期だけは朝早く起きて作業はしている。小国の冬は起きても良い事ありそうにないほど寒い。

 

夜明けとともに労働する。

 

これは父郁夫がそうだった。

昼に食べる握り飯を用意してから、屋外で作業。もう僕もそうなりつつあるな。

 

朝を味方につけてみるのだ。

 

 

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本日は来客あり、義理の妹夫婦と旦那さんのお母様。小田温泉で泊まったあとわざわざくぬぎの森までやって来てくれた。熱心にギャラリーを観ていただき本当にありがとうございます。

 

現在もギャラリーは父郁夫の大きな油絵を展示していますので是非お立ち寄り下さい。

 

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 駐車場の石積みが苔で見えなくなっている。水路の石積みもだ。ここにはもう少し石がいる。ここまで手が回れば最高だな。

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暫くは、同じような変化のない草刈りと岩ぐらいしか出て来ないが、どうか飽きずについて来て頂きたい。

 

 

 

寄生計画初日8/1

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8/1火曜日

くぬぎの森寄生計画初日。

 

晴天で幸先の良いスタートを切った。

暑さは想定内!アブもまぁまぁ想定内。

完全防備‼︎ 

 

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草刈りにどれだけ時間を費やすのか?が最大の問題だろうと思う。これは自然との駆け引きで一番大事なところ。草刈りなんて、やろうと思えばどこまでも行ってしまう。草が刈られていくのを見ると綺麗なもんで、ガンガンやってしまう。でも後から気づく…やり過ぎたと。

どこで"止めるか?"

これだ。

 

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しっかりグランドを作る作業。

これこそが外でやる事の醍醐味。

箱の中で作品を展示するのとは違い、どう周りとの関係を作るか!地面もフラットではない場所を上手く使う。これがある意味"寄生"とも言える。

 

 

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岩が姿を現わす。岩はこの森の強さを地味に表現してると思う。僕は岩の力に現在惹かれまくりだ。雨風に耐える岩がこの森にはいくつあるのだろう。岩を彫りたい…

 

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番外

ミヤマクワガタがいた。

ミヤマクワガタとオレンジ色のキノコが凄く綺麗だった。

 

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オレンジ色がとても綺麗な8月

くぬぎの森の緑に、オレンジ色が散らばる風景が暫く続く。

 

 

 

 

 

くぬぎの森寄生計画その1

明日から始まる労働。8/1-9/31まで少し長丁場ではあるが、自然に食らいついていこうと思う。

 

その前に少し"くぬぎの森寄生計画"について書いたので読んでもらいたい。

 

くぬぎの森で仕事をするという事

 

標高約650m
阿蘇郡小国町西里麻生鶴
吉武山を正面に山に囲まれた三共牧場の中にある櫟の森美術館周辺の森
敷地面積5000ヘクタール


『挫折から始まる』
2011年くぬぎの森に作業場を移す。(それまでは福岡の家の一部を作業場として使っていた)
作業場と言っても特定の場所はなく、木を切り倒し平坦な土地を探してそこで作業を進めていた。もちろん屋根はなく、天候に左右される事が多いので簡易的ではあったがテントを購入しそこで作業をした。
しかし最初の冬に恐ろしい目にあってしまう。2011年12月の大雪でテントが破壊されたのだ。
雪に押しつぶされたテントを見るだけで、片付ける事もできない。雪カキというより氷掘り。固まった思い氷をシャベルでカチ割り、運ぶ。冬の間ずっとその繰り返し。疲労もピークに達したころ、何故か僕の気持ちは軽くなった。
諦めた様な感覚。
自然の脅威を肌で感じ、もうどうしようもないと諦めたわけだ。

 

 

"成るようにしかならない"
『杉林の中に小屋を作ろうと考える』
素人が作る小屋。馬鹿にされたくないから台風が来ても倒れない小屋を作りたい。(実際2013年と今年2015年8/25の大型台風直撃にも耐えた)
春から基礎作りかは始めることに。
全て一人でやらなければならない。柱を立てる事も屋根を上げる事も。約1年かけてゆっくりとやった。はやく作品が作りたく気は焦るが、ペースを上げようにも上げられない。一人でやってるわけだから。最初イライラもしたが諦めも早かった。

 

 

とにかく"成るようにしかならない。"

雨の日はもちろん作業中止。
少しづつだが前に進んでいた。
屋根の設置まで漕ぎ着けた時、ほっとしたのを覚えている。屋根を取り付けている時のあの景色、空気、鳥の音、上から見下ろす行為の優越感。子供の頃の木登りを思い出しすこし泣けた。
小屋は杉林の中に建てたので、屋根に登り頭上を見上げると杉が天を昇るようにそびえ立つ。屋根の20cm隣には杉があり、触る事も出来るのだ。この感覚。小屋を建てなければ分からなかった感覚。見えなかった景色。
僕はくぬぎの森に来て、いきなり挫折し心折られた。
しかしその事で見えなかった景色が少しずつ少しずつ見える様になってきた…

そして僕の仕事はだいぶ変わっていった

 

 

"成るようになる"
から
"どうにかして形にする"

 

昔の僕の木彫は、デッサンである程度出来上がりのイメージを自分の頭の中で合わせていた。作業はデッサンで得たイメージを頼りに進めていく。木と僕との静かな闘いだ。
しかし、くぬぎの森で作業小屋を作るうちに、僕の頭の中のスケールが大きくなって、小屋自体の存在が 僕の彫刻になっていた。彫刻を作ろうとイメージし作業をしたわけでもない。ただ杉林の中に塊が寄り添う様に建っていくと、景色と空気が変わっていった。そこに僕の気持ちが反応し変わっていったと思う。

彫刻という表現ではないのかもしれない。でも僕は、くぬぎの森全体を彫刻したいと考える様になった。

五年前に書いた文章を読み返し、少し補足も入れたが、くぬぎの森に仕事場を移した最初の頃は、とにかく気持ちが下がりっ放しというか、自然にやられていたと思う。文章がやられてるというか…

 

あれから時間も経ったが、日本のあちらこちらで災害が起き続けている。
僕がくぬぎの森での最初の展覧会の年も、制作中に東北の震災が起きた。

3.11

自然の恐ろしさを、日本中がここからずっと感じ続けている。

僕のやっている事が、どんな意味があるのかと問われたら、それは分からないとしか答えようがない。
もともと意味なんかないと思う。

でもこれだけは言える。
くぬぎの森で"労働"する事で気持ちが楽になり、色んなものが見えてくる。

 

その2に続く…